おっさん天国 物欲の泉

日々物欲にまみれ、煩悩の海に溺れて暮らすおっさんがおススメしたい、あんな物・こんな事をご紹介いたします。

仮面舞踏会

 

 

久しぶりに嫁の目を盗んで(笑)横溝正史シリーズⅡのレビューをやってみようかと思います。今回は『仮面舞踏会』です。

 


放映
1978年6月3日から6月24日までの全4回

出演(古谷一行以外)
草笛光子
木村功
柳生博
三ッ木清隆
乙羽信子他

監督
長野卓

音楽
真鍋理一郎


あらすじ

軽井沢で避暑をとっていた金田一耕助は財界の大物『飛鳥忠熈』から調査を依頼される。忠熈は近々、映画女優の『鳳千代子』と結婚をすることになっていた。千代子は既に4度結婚・離婚をしていたが、そのうち二人の前夫が変死をしていた。金田一が依頼されたのはその件に関する調査であった。しかし、金田一の必死の捜査にもかかわらずその後も鳳千代子の周辺で次々と被害者が・・・
事件の背後には鳳千代子と千代子の一人娘『美沙』の出生に絡む秘密が絡んでいるようであった。

 

 

私情インプレッション

 

この『仮面舞踏会』。横溝正史のエッセイ(?)、『真説 金田一耕助』の中に以下のくだりがあります。

 

昭和37年のことだから(中略)私は当時まだ存在していた探偵小説専門雑誌『宝石』に『仮面舞踏会』なる長編を連載していた。
その年はあたかも私の還暦に当たっており、先輩友人知己相集うて、盛大にお祝いをやってもらったが、その席でいまは亡き江戸川乱歩が演壇に立ち、

「横溝君はえらいものである。この年で長編を書こうとしている。」

と、大いに賞揚してくれたまではよかったが、八回か九回書いたきりで中絶してしまったのははなはだ醜態であった。(中略)
この小説は一昨年単行本として刊行されたが、その続稿を書いているあいだじゅう、私は楽しくて仕方がなかった。(後略)

 


横溝正史の小説と言えば、おどろおどろしい、気色の悪い、陰気で重くるしい、血の汚れた系の作品を皆さんはイメージするかもしれません。が、この作品には不思議とそういう重さがあまり感じられません。
その理由のひとつに、作品の舞台が避暑地の軽井沢という開放的な場所であること。また時代設定が昭和35年という、横溝作品の中では比較的新しいものであること。また登場人物が芸能人、作曲家、画家、財閥のドンと言った華やかな世界の人間であることが関係しているのかもしれません。従って、この作品に関する『私情インプレッション』を総括すると

 

 

「比較的サラッと見られます。」

 

 

といったところでしょうか。原作にもある程度忠実であり、その後のパートⅡの作品を考えるとなかなかにいいんじゃないかと思います。とはいえあまりグッとくるものもありません。それはもうこの番組のクオリティーがどうのこうのということではなく、原作からして既にそういう(おどろおどろしさの少ない)作品だったということなんじゃないかなと。横溝作品独特のアクの強さが苦手という人にはいいのかもしれません・・・てそういう人はハナから金田一ものとか見ないか(笑)

ただひとつこの番組で気になるのは、テレビの方の最後で無理矢理『お涙頂戴』的な展開に持っていこうとする意図がミエミエってことで、そこがちょっと私情インプレッション的には減点かなぁと。あとはまぁ、可もなく不可もないって感じですかね。
あともうひとつ、この作品について印象的なことをあげるとすれば、それは美沙役『村地弘美』さんの異常に細い眉毛と、これまた異常に長いワンピースの襟。そんなところでしょうか(笑)

総括すると、それなりの大作ではありますが、長いだけであまりパンチの効いた仕上がりになっていない!って感じです。関係者の皆様、すいません。

というわけで、次回は『不死蝶』をやる予定です。『不死鳥』ではないんで、念のため。それでは次回を《ほどほどにお楽しみに》。