おっさん天国 物欲の泉

日々物欲にまみれ、煩悩の海に溺れて暮らすおっさんがおススメしたい、あんな物・こんな事をご紹介いたします。

悪魔が来たりて笛を吹く

 

次いきます。『悪魔が来たりて笛を吹く』です。

かつて、テレビCMで 「この小説だけは映画にしたくなかった。」 っていう、横溝氏の言葉をコピーに使っていたアレです。(映画版の話)

原作の中でもこの話について以下のように書いてあります。

(前略) ほんとうをいうと、私はこの物語を書きたくないのだ。この恐ろしい事件を文字にして発表するのは、気がすすまないのだ。なぜならば、これはあまりにも陰惨な事件であり、あまりにも呪いと憎しみにみちみちていて、読むひとの心を明るくするところが、微塵もないからである。 (後略)

もとより探偵小説なんてものは扱っている題材が題材だけに、気分が明るくなるとか、ポジティブになるなんてことはまずあり得えません。ましてや、目頭が熱くなるくらい感動して、「私も・・・」なんて真似をしたら・・・それは犯罪というものです。 しかるにこの『悪魔が来たりて笛を吹く』。 作者本人も認めているように、内容的にかなり重いです。見終ったあとの後味の悪さ、やるせなさは横溝正史シリーズの中でもブッチギリの全開バリバリです。 従って、そういうのが嫌いな人は見ない方が無難かなと。

 

放送  1977年6月25日~7月23日までの全5回

出演 草笛光子

江原真二郎

壇ふみ(連想ゲームレギュラー)

加藤嘉

児島美ゆき(元ハレンチ学園

三崎千恵子男はつらいよのおばちゃん)

観世栄夫

沖雅也

長門裕之

森次晃嗣ウルトラセブン

中山麻理(元三田村邦彦氏の女房)

監督 鈴木英夫

音楽 中村八大

 

昭和22年。東京銀座の宝石店『天銀堂』で店員を毒殺し、宝石を奪い去るという凶悪な事件が起きる。元子爵『椿英輔』はこの事件の容疑者として警察に連行される。疑いが解け、英輔は帰宅するが、娘の美禰子に「このうちには悪魔が住んでいる。そいつが警察に密告をしたのだ。」という謎の言葉を残して失踪・自殺・遺体で発見される。 しかしその後、自殺したはずの英輔が家族に度々発見されるに及んで椿家の人々は不安と恐怖のどん底に。やがて、その不安は現実のものとなる。 英輔の妻、『秝子(あきこ)』の伯父、同居をしている『玉虫公丸』が殺される。美禰子からの依頼でこの事件の捜査にあたった金田一は、事件の鍵が椿元子爵の逮捕前の須磨旅行にあると睨み現地ヘ向かう。現地で有力な手掛りを知っていると思われる関係者の存在を掴み、話を聞きに行くが一足違いで殺されてしまう。その頃、東京でも・・・

 

 結論。素晴らしい出来。マーベラスであります。テレビドラマと映画を比べた場合、デキの点ではどうしても映画の方に軍配が上がることが多いのがデフォです。 それは主として金銭面から来る作品のクオリティの差と、スタッフの気合いの入り具合による“こだわり感”が圧倒的に映画の方に上だからなんですが、このドラマは逆で、ドラマのクオリティが映画を軽く越えてます。原作にも忠実で、配役も適材適所。 音楽も素晴らしい。前作『三つ首塔』と同じ中村八大氏。まさに完璧!特に『悪魔が来たりて笛を吹く』のメロディは最高! 「ハーモニーを捨て、ひたすらメロディの不気味さ、怨念の旋律のみを追求した。」とは中村氏の弁。納得。 この重たいストーリーを、妖しく、美しく、そして哀愁を込めて盛り上げます。 

あと、個人的には中山麻理さんの存在が印象的です。 横溝正史シリーズは私が高校の時、地元でひっそりと夜中に再放送していたのですが、その時に見た中山麻理さんの『大人の女性のお色気』にはドキドキしたものです。あれからもう●●年。あ~ヤダヤダ。年は取りたくないもんです。 というわけで『悪魔が来たりて笛を吹く』のレビューはここまで『獄門島』に突入します。

 

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